書店に行くと安っぽい挑発が繁茂している。三流の活字を並べたて、ありがたくもない自己実現の群れの中で砂金を探すつもりで背表紙を眺める。
元行員いわく、突然銀行をやめた先輩がご自分で執筆された経済書をある日営業所に現れ、何冊か売りに来られたそうだ。当然、突っ返すべきところだったが付き合いがあった手前一週間預かり回覧したが買い手がつかず、全て御返ししたそうな。
このつまらんエピソードは妙に残り、書店に積まれている書籍の多くがもの悲しく見えるようになった。
悲しい書籍の中で砂金を探すメソッドが人にはいくらかある。なんらかの信頼を拠り所とした方法だ。だが本を選ぶ動機は好奇心で構わない。消耗する時間を前に信頼できるソースを探していてはゾンビ映画は発見できぬ。信頼のない世界、金を貸す行員にはいささか難しすぎただろうか。信頼が支配する世の中は金融が作っている。