ヴェローナを後にし、ボローニャへ向かう。
少々、コン詰めすぎたなと思いつつ、
出発はスーツケースを身体で押さえつけて閉めることが古典なのだから
詰めすぎぐらいが、丁度、良い。


ボローニャについた頃合いは、
街中が放課後のような感じの時間帯だった。
くたびれた、というよりは、今日はもうなにもしないや、といった楽観的な気分が
街に立ち籠めていて、それが一層、今の私には恐怖を誘った。


ボローニャは古都らしく、街への郷土意識も強いようだ。
地図を見れば、分かりそうなものをあえてと、ボローニャッコに聞いてみる。
ニャッコは、適当なことばかりいいながら、あっちだ、こっちだと
まるで出鱈目な方向を指差す。その立派な目鼻立ちとそのジェスチャー
だまされながら、ユラユラと街を徘徊して辿り付いたのが
ジョルジオ・モランディのアトリエである。


モランディかい、あいつはもう死んじまった、いい奴だったよ、
といった適当な親密感の中に彼が住まったアトリエはあった。
通りは、モランディ広場とか今では命名されているものの、ただのアパートメントが
ならんでいるだけだった。
画家が時折、描く風景画の色彩がそうした空気の中で薄められて行ったのだろうかと
オレンジ色の街並を過ごし、ふと思う。
ちょうど彼の作品展がやっていたので見ることにした。


描くモチーフはこの街にはずいぶんとありそうに思えたが
いわゆる静物へと彼の眼差しが向かって行ったのはなぜなのだろうか。
この街の黄昏がつらかったのではないだろうかと思えるのは
彼の静物がわずかに暖かみがあるものの、どちらかと言うと冷たい色彩へ
向かっているように思えたからかもしれない。