「何をいっているのか分からない人」


彼は何かを一生懸命に訴えかけてくる。
私はそれなりに、どういう話なのか聞こうとする。
それは、こういうことですか。と尋ねると
いや、要するに、と返ってくる。


それでも私にはよく分からないので、
ということは、こういうことが必要になりますか、と加えると
いや、要するに、と返ってくる。


彼と私が同じ部屋にいたとして、
そこで交わされるやり取りは、まるで役にたたないものである。
このニュートラルな関係は一体なんだろうか。
まるでゴムボールが二つ転がっているみたいなものである。
一方的に話す、スピーカーのようなコミュニケーションは、
大変、新しいのかもしれないと、はたと思う。
コンテクストレスの会話は、自己主張が調味料になっているようだ。


A「娘が3月に卒業式なんだ。」
B「昨日のプロ野球、凄かったね。」
A「いやあ、どんな格好で行こうかと迷っていてさあ」
B「八回裏に一点差までたどり着いた時は行けると思ったんだけどね」
A「じゃあ、明日八時にミーティングで」
B「了解しました。」