本格的な意味での構造力学の書籍を手に入れた。
現在、設計者はほとんど手放しで設計が可能な状況ではあり、
対話によって掴んでいくというのが専らで、これはとてもいいことだと思う。
何かの時に少しは助けになると思ってパラパラと読むとこれが結構おもしろく驚く。
建築士レベルでは得られぬ水準のものが少し知りたく思った。


事務所ではよく構造的感覚があるかどうかという話が出た。
つまり、素材に触ることでタワミの感覚が得られ、
大体どれくらいのピッチで水平材を打てばいいか、
建築面積に対する垂直方向の立ち上がりの安定したバランスがどの程度かの直感のことである。
経済性、生産性という側面からもこれまでから逸脱しない経験的なものがその構造的感覚の真意のようであり、
構造という言葉に酔ってみるものの、やっぱりそれは力学的な責任までは中々手が出しにくい。
建築っぽく見せるために、梁らしきものを図面に落とすのがよく分からぬものである。



建築家がいうところの構造は、形式的なものであり、
ビームがいくつ飛ぼうがそれは、力学とは少し意味合いが異なる。
近代建築の鉄骨造を様式的に潜ませ、非分析誘発性を帯びさせるというものになっている。
形式的であるために、それ自体力の流れのようなものも完結している必要があるが実質的な耐力は見えなくてもよい。
透明性という概念にも似たものである。


先日、読んだ建築設備家の対談が中々おもしろい。
かなり突っ込んでくる建築家が相手だとこっちも燃えるのだとか。
案外、建築の歴史的価値、意味といったヒロイックな事をしゃべる人間は
まわりを巻き込んでいく、興奮させる力があり、また技術者がそういうものに弱いのは意外だった。
建築家よりも技術者のほうがおもしろいものに敏感であるかもしれない。


こいつといっしょならおもしろいもんが見れるという馬鹿さが人間必要と言えるだろうか。
それには、結果がいるし、しゃべりや考え方、趣味、そういうもんが要るだろうな。


図解 古建築入門―日本建築はどう造られているか

図解 古建築入門―日本建築はどう造られているか

太田博太郎 監修
西 和夫 著


太田博太郎信仰が続いている。
この人の本なら有難いというような感覚がある。
本を読むというのは、少なからずそうした信仰に基づくことも多い。


本書は、大変分かりやすく、日本建築の構造形式を概観でき、
とっつきにくさを解消してくれるように書かれている。
軸組、屋根がしっかり理解できる。


建築の歴史は、ますます、何もしゃべりたくなくなる。