伊藤為吉という人物がいるらしいが
この男、相当すごい。


万年塀を発明し、製造普及に関わった男で
電信柱なんかも作っている。


こういうローカル設備のデザインはまとまって研究書を読むとすげえおもしろい。
大学だけじゃないだろうが、門の設計ばかりしている奴もいるらしい


鉄筋コンクリート創始者の一人とされているモニエに習って
街角の植木鉢のようなもの、または郵便ポスト、そういうもののデザインをしている連中に
ジェラシーを抱くのはオレだけじゃないだろう。


こういう時は工法のデザインが必要でそれが読み解けるとおもしろい。
住宅の工業化に標準設計が大きく寄与するわけだが、
日本住宅公団の後、民間いち早く標準設計に乗り出したのが長谷川コーポレーションだという。
今筆者の住むマンションはハセコーの改修工事中で一棟まるまる仮がこいで囲まれている状態である。
こういう郊外のRCマンションは築20〜30になってきているため、これから改修工事でいくらか稼げる。
実際、新築工事よりはコンバージョンという夢や、高齢者施設の需要などノウハウがあると重宝されるかもしれない。
意味があるのかしらないが、シールのやりかえ、壁面、鉄部の塗り直し、給水塔の取替、バリアフリー化なんかをやるらしい。


植物を植えるデザインなどもそのメンテナンスなど密度が上がってくればおもしろい。
51号館も清水建設によって耐震補強工事に入っていた。
千葉学が取ったコンペのような類のものがこれから増えてくるに違いない。

「住宅」という考え方―20世紀的住宅の系譜

「住宅」という考え方―20世紀的住宅の系譜

松村秀一 著


本書は二度目である。こういう事がしたいのかもしれないという
ヒントが書かれたものに感じたのを覚えている。


本書がおもしろいのは、スーパーゼネコンと同格の資本規模を持ち始めているハウスメーカー
よほど建築の意匠屋には「見えない」建築の話に見通しを立ててくれるところだろう。
とくに朽ち果てたセキスイハウスA型を発見した下りは、興奮すらする。


今日の設計事務所の行っているクリエーションは、部品の設計に達するものではなく
あくまで、膨大なカタログの中から選択して行われている。
多分設計主体の快楽があるとすれば、この流通したものをカスタマイズすることではないか。
しかしながら蝶番やドアノブ、シャッター、ブラインド、照明、エトセトラエトセトラ
そのほとんどが選択によっている。トイレなんか代表的で、よく見つけて来たなというほうが偉いぐらいである。
それらをカスタマイズする余地がどこまであるのか。
小さなカスタマイズはそれこそ卑屈なものに見えるものだ。


本書でおもしろかったのは、通常私たちが設計で使うことになる例えば
下地に使うラスボードや化粧用のプリント合板、アルミサッシのタイプを見れば
その時代が特定できるというもの。
漆喰やモルタルを塗りたくる時にカドに使う、ビードのようなマイナーなアイテムや
サッシュ枠内のセッティングブロック、シーラントを見れば、その製造年月日が見えてくるというのは
まことにおもしろい。


松村がいうように、ネオヴァナキュラーに作られていく住宅の中で
そのイメージだけが近代のような英雄的に振る舞うのは、貧乏人のルイヴィトンのようなダラしないものに見える。


カンポ・バエザの仕事を作品集で見たが、英雄的でナルシスティックに感じた。
自意識過剰が伝わってくる。
気取ってるんだけど、ガラスに思いっきり色が着いていた。
別の本でグレン・マーカットを見たが素晴らしい。

最新 建築環境工学

最新 建築環境工学

田中俊六、武田仁、岩田利枝、土屋喬雄、寺尾道仁 共著


快適条件、日照日射、採光照明、換気通風、伝熱、湿気結露、音響について大づかみで捉え直すにはいい本。
細かい数式を読解するのが大変だが
建築に実践されるときに数式が応用されていく場合、数式もその振る舞い方が少し違う。


豆知識というか常識なのかもしれないが
屋上緑化は既に蒸発効果による冷却効果はほとんどない事が明らかになっているそうである。
筆者は恥ずかしながら知らなかった。
冷房負荷の軽減も断熱材のほうがはるかに費用対効果が優れているようでお金がかかる割に、これまたほとんど効果がないそうである。
弊社は環境問題への取り組みとして積極的に屋上緑化をしている。
というフレーズはよく見かけるが真相は私もよく知らないのでご確認ください。


環境工学だけじゃないけど言語が氾濫しすぎている。
特に研究や学問という言語は相当曲者である。
上に書いたことも私はそう専門家が言ってたと言うことしかできない。
抽象的なことばかり言っているので、起立、令、着席くらい分かりやすくしてほしいが無理なのか。


抱きしめたい

抱きしめたい

ジャズでもジャズっぽくない楽器が好きです。