午前中、泳ぎにいく。
この時間帯には泳ぎに来ている人間は、それほどいないので
気持ちよく、プールをすいー、すいーっとやっている。
私はトンカチではないがあまり水泳が得意ではない。
しかし室内プールのあの独特の音の響き方が、
身体が滲んでいくようで心地よい。


水泳は心も洗濯されるようである。
50mを16本と、25mを8本泳いで、1km程度泳ぐ。
800mぐらいから既に絶望的な疲労を獲得する。


魚みたいな顔をしたおばさんが、
私の前をすいー、すいーっとやっていて、
一本泳ぐたびに、私は溶岩が吹き出したようにぐちゃぐちゃな顔になっているのに
このイワシおばさんは、タッチするや否や、ぐるんと180度向きを変えて進んでいく。
普段は水中で休日に陸に上がっている人なのかもしれない。
それぞれ人には持ち場というものがあるのだ。


監視員をやっている女の子は、スクール水着を着ている。
あだち充にでも出てきそうな感じの子で、
改めてプールはいい、と溶岩は思うのである。


幼少期にはプールに入る習慣がなく、初めて入ったときも
このカルチャーをひどく、不審に思った。
なぜ、水に入らねばならぬのか、幼い私は憤っていた。
プール開き!と先生が言えば、いえーいとクラス中がベルリンの壁でも壊れたかのような
バカ騒ぎをするなか、一向に私には共感できなかった。
既に友人たちは、一揃いの競泳法を体得しており、
そんな技術を知らない私は、ビート板という発泡スチロールにしがみつく他なかったのである。


私は泳ぐよりは、カラフルなブロックを潜って拾ってくるようなゲームのほうが興奮した。
潜水のような競争では私はある程度力を発揮できたが
それも同級生で30分潜水できる少年が登場するまでの間であった。
彼は見た目は、控えめで勉強もそれほどできず、運動もぱっとしなかったが
潜水において超人的な能力を発揮し、クラスの中では一目置かれる存在となった。
私はプールとますます疎遠になり、次第に見学して休むようになった。


そんな疎遠だったプールが今になって私を迎えてくれている。
「やあ、しばらくだね。元気だったかい」
「まあまあだ。」
「今日は思う存分すいー、すいーっとやってくれよ」
はて、私はいつのまに、水泳ができるようになったのだろうか。
私は疎遠だったことしか覚えておらず、なぜいっぱしにクロールやセオヨギができるのか
今ひとつ判然としないまま、プールを後にした。



Power Corruption & Lies

Power Corruption & Lies

Get Ready

Get Ready

New Order を聴き始めた。
Joy Divisionの後身であり、
イアンカーティスが自殺した後に結成された。
カーティスの声がなくなったので、なんとなく手応えがないかと思ったが
妙な風通しの良さがある。


ストパンクと呼ばれ、ピストルズ以後の音楽になるらしい。
その後も新しい音源を積極的に導入し
ハウスや電子音源を開拓していったという。

テクノビートのようなものに近づいていくにつれて
音楽を受動的に聴いてしまう身体が形成されていくように思える。