「スーツケースは都市よりも軽い」

彼女は軽装備で旅行することを良しとしていると、私に言った。
確かに彼女は、軽く簡単であることでバランスがとれている。
さらに言えば、軽装備であることのほうが重装備であるよりも賢く、
優位にいるといったニュアンスまであった。
この優位にいる感覚がちと気に食わないので、揺すぶりたい。


軽装備である人は重装備である人よりも依存的であるといえる。
自己完結を拒んでいる点で都市的であるとも言える。
旅行先と融合できる意味でも軽装備は旅行術上、長けているように思える。


しかしながら、これが肝心なところだが、スーツケースに関して私は一定の魅力を感じている。
スーツケースは旅行の中ではオーソドックスなツールとなっているが彼女の定義では重装備に分類されるだろう。
軽装備派は、これを持たない。
小回りが気かず、バカにでかいのでバカっぽい。
シャツやパンツがぎっしり詰まっていたり土産が入っていたりする。


しかし、スーツケースは他者に依存していないという意味で
たったこれだけで、あなたは生きていけるのかと思える量だといえる。
その簡単さは、むしろ煩雑な世の中であるがゆえに、依存しない明るさに満ちている。
靴下は一個ではなく、洗って使えるように3つか4つ入れるスマートさ。
消費するのではなく、ちょっと多くてもを大切に使える量がきっとあるような気がする。


ミニマリズムは都市を伴っているが故に、重装備である。