走る女性を見かけた。
彼女の走り方は、綺麗なものだった。
鞄をうまく、身体に巻き付けてトントコトンと走っていた。


なにかに急いでの事だと思うけど
その走る理由はもう少しベツのものに思えた。
彼女が日々、笑うときでさえ、
忙しない気持ちなのではないかと思えた。


彼女は途方もなくつまらない話を
自分だけで盛り上がっていることに気がついていないようで
間の手を入れられずに聞き流すままにしてしまった。


ボートを漕ぐには地図はいらないのかもしれない。
漕ぎながら、地図はできてくるのかもしれない。