「ヨーロッパ周辺文化圏と近代」
フィンランドのナショナル・ロマンティシズム建築を中心として

著者 伊藤大介


「様式的自由と擬洋風建築」

著者 中谷礼仁



伊藤は、近代化の震源地では、新古典主義によって「インターナショナル」を目指した近代化が目指された一方で
フィンランドおよび、ヨーロッパ周縁の「小国」において、
「ナショナル」を目指して近代化が計られた応答関係に注目している。
当時の時代的、政治的状況に対する鋳型として建築が生み出されていき、
時代に敏感に反応したものとして改めて視覚化している。


中谷は、近代化の下地として醸成されていた当時の状況を
擬洋風建築という纏まりをきっかけとし、技術、様式、思想、形からみるみる読み解いていく。
技術の伝来によって、相互に連絡経路を持たずに、擬洋風を作り出していく。
個々が状況に応答しただけで、生まれていく建築的状況を一次プロセスと
それらが次第に体系化し、ステロタイプを共有しはじめ、洗練されていく二次プロセスにわけており、
興味深いのは、定型を持った事で、擬洋風が終焉を迎えていくという捉え方。
現在の清水建設になる清水屋が築地ホテル館を建設していく様子や
旧中込小学校を藤森に従い、アメリカの技術によって設計されたとしながらも
規矩術による幾何学的基盤の整った日本の棟梁が、多角形の平面を作ったとし、そこに擬洋風の本質を見ている。