今日は母校の修士論文の発表があったので聴講しにいく。
修士論文クラスになるとかなり高い水準の話が聞ける。
実地を伴った理論こそ、厚みが伴っておもしろい。
読書だけでは培えないもの、これまでにないものへ挑戦できる迫力がある。


歴史研からは、ベトナムや中国の建築史上の影響関係だった。
まだまだ、アジアの建築史は整理されておらず、日本人が外科的に行う場はあるようである。
ただ、何が分かったのかが、少し伝わりにくい印象を持った。

意匠系では、アアルトの抽象絵画を整理し新しい像を提出するもの。
アアルトがあのような絵画を描いていたこと自体、知らなかった。

地下防災計画に関するものは、道路と建物が一体となっての防災計画の提案であり、
それにつく、収支計画まで明瞭にし、その社会的有用性を強めている。
防災に関する意識が、僕の場合非常に薄いことを痛感しつつも、興味深い内容だった。

構造力学からは、力のアルゴリズム解析から振り子面システムというもので
従来とは異なるメカニズムでのストラクチャーの提案があった。
新しい構造の提案をする場合、そこには形が提出されるがそこに美学がやはり介入するようだ。

都市計画の新しい尺度として、問題提起されているのが
工場配置の地下水による汚染の度合いを調べたもので教授はこれは
元来なかった都市計画の指標の一つではないかと鼻息が荒い。
説明が非常に洗練されていた。

建築の生産にかかわる、コストと品質管理のものは、実務的であり
集団でものを作る際の現場管理の新しい法則を提案しているようだった。


エンジニアとデザイナーの融合について古谷教授は最後にまとめる。
今日は、非常に幅広くかつ、高いレベルの発表が聞け収穫のある一日だった。
友人間でももっと関心の広がる話題を繰り広げたいものである。

日本建築史序説

日本建築史序説

太田博太郎 著


日本建築の流れを大きく抑えるために読む。
伊東忠太は通史を
仏教渡来以前、飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、桃山、江戸としたのに対し
太田は古代、中世、近世と整理しなおしている。


大仏様、禅宗様といった言葉を提唱し、これに和様を含めての
中世の論述がおもしろい。
軒の反りを飛檐垂木の架け方から化粧垂木、屋根下地、野垂木から説明し
とくに桔木の重要性をフォルムから説く。
案外、フォルマリスティックなヒントをくれる本だと言える。
他に重源のやった仕事のうち、大斗、肘木、巻斗といったものを挿し肘木に置き換えたことを
示した箇所が印象的であった。


はくたろうだと思っていたが、ひろたろうらしい。