アドルフ・ロース 著
伊藤哲夫 訳


原文は「Ornament und Verbrechen」である。
この「Verbrechen」は英語では「Sin」ではなく、「Crime」だとするのが
正しいとして、「装飾と罪悪」から「装飾と犯罪」に改められた。
と訳者は言う。


ロースのテクストが、こうした軽快なものであることに愉快な気分になる。
「女性と家」や「近代の集合住宅」、その質疑応答など
フォルムが強調されているきらいがあっただけに、
こうした言説を伴うことで、ロース観は大きく変わる。


装飾を断罪していく小論は大変有名なものである。
自分の顔を飾りたてたいものを、
装飾的とするロース自身ひげを生やしており、
ロース趣味の装飾が指摘されている中でも、
本書が担った役割は非常に大きなものだっただろう。


「進歩的な人間」とパプア人を対置されていくわけだが、
今日的には「進歩的」というのは、どういった人種のことだろうか。
ディーゼル車を乗り回す者だろうか、
コンビニでお茶や弁当を買う者だろうか。
レンタルビデオの延滞料金を支払う者だろうか。
オタクの事かもしれないし、喫煙者かもしれない。