徴候・記憶・外傷

徴候・記憶・外傷


中井久夫 著


精神科医中井久夫の仕事に関するテクスト。
まず、本のサイズが少し大きいのだが
不思議な包容力のある大きさで、そこに書かれた文字が
やさしげな印象を持つ。
知性の大らかさを、そんなところに感じてしまう。


記憶について書かれたものがおもしろい。
発達的記憶論という厳めしい名前になっているが
言葉が「やさしげ」である。


ふと、誰かを思い出そうとして名前が出てこない事態を想像する。
「ほら、あの年に入学した」
「何かの会ではこんな服装をしていた」
という手探りの状態で、対象にまつわる記憶が出てくること、しばしあるかと思う。
これを中井は「索引性」が残っていると表現している。
各記憶は、あるコンテクストを持って記憶されるが
こうした時、コンテクストによる記憶は強いというのは、よくわかる。


勉強することは、コンテクストの強化だと言える。
友達や家族に、「あれとって」と言うと「あれ」を取ってもらえる。
これはコンテクストを共有しているためだと言えることも頷ける。
勉強が水準としばし言われてるのは
このコンテクストのネットワークの規模や属性によるのかもしれない。


記憶配置が、徐々に縦並びから横並びに変わって
年とともに人生はクロノロジー年代記)から
パースペクティブ(遠近法)になり
最後は一枚のピクチュア(絵)になる。


これをおもしろいと思った。
記憶を拠り所にした世界の見え方が違うって捉えれば
中々、誰でもおもしろいだろうと思える。
ユニークな記憶の配列を持った文化があれば、おもしろい。


泥棒、侍、スポーツ選手、弁護士、医者
それぞれが記憶の配列にあるユニークさを持っているだろうと思う。


自然な建築 (岩波新書)

自然な建築 (岩波新書)


隈研吾 著


建築家として活躍している隈の近作を
自然素材という枠組みで説明していく。
フランク・ロイド・ライトを取り上げながら
建築を説明していく事が印象に残る。


冒頭にもあるように、コンクリートやガラスを批判することで
20世紀とは違う建築を目指している。
コルビュジェやカーン、丹下健三の建築がまるで犯罪者のような
感じで掲載されているのが笑える。
そうした態度の中で石や竹、和紙、化学繊維、水、日干し煉瓦に
向かっている。


いいなと思ったのは、ルーバーが光を粉砕する装置と表現しているところ。
ルーバーって言葉だとどうもねえ。



ジャック・ニコルソン
嫌な感じがたまらない。
目の動かし方がその辺にはない存在感を持っている。