シャーペンの芯

シャーペンの芯を購入した。
いたって普通の奴だ。
学校の傍にある、文房具屋で購入した。
言ってみれば、学校と文房具屋は、
ブラシと歯磨き粉のような必然性を持っている。
そんな歯磨き粉のような文房具屋にユラリと入り
一通り並んでいる文房具を眺め
レジに芯を持っていった。


シャーペンの芯を買ったのは、ずいぶん久しぶりであった。
芯は無くならないものだと信じていたくらいだ。
永遠とは、シャーペンの芯の事だと思っていた。
ペンの頭を何度押せども、出てくるはずのものが
いよいよ出てこなくなり、
今日決心をするに至ったのだ。


小学生の時にシャーペンを持っている奴は
進歩的な感じがしていた。
賢い人は皆、シャーペンを持っていたからだ。
「あんたにも、買ってあげるわ」
と母に言われても、まだ俺には早い
そんな気持ちで自分を戒めていた。


思ったより高価な事に驚いた。
きっと、どこか遠い国の工場で
芯だけを作っている無口な労働者がいるのだろう。
彼らが作り出す夥しい数のシャーペンの芯を
私は今日、一握りだけ買って帰った。