介護入門

介護入門

モブ・ノリオ 著


読み通しても、何が書かれていたのか具体的にはよくわからなかった。
ただ、祖母の介護をする傍らで、怒っていることが
ずっと書かれていたにもかかわらず、何か優しい読後感が残った。
何かに保険がかかっている人からでは、出てこないような魂らしきものを感じた。


モブさんの場合、文だったが
何か形として残す場合に形が目的になっていてはいけないと感じる。
伝えたいこと、これは結果論にすぎず、残すことが目的だろうと思う。
形に残すだけで、勝手に伝わるようなものでなければ
形にすることは虚偽だろうと思う。


介護地獄というジャーナリズムによる政治があり、
それによって植え付けられたイメージが介護にはある。
これに対してはどうもまだ、覚悟が持てない。
下の世話から風呂など人の人生を背負う覚悟、死の覚悟がないからなのか。
考えれば考えるほど、口を噤むしかなくなっていく。
親の老衰は、死と同じように避けて通れないものであり
それを皆見ないようにしているのかもしれない。
大半が逃げ続け、一方で覚悟を背負った人が戦っている。
きれいごとを言えば、恐ろしいほどに浅はかに映る。
浅はかじゃ駄目なのだろうか。


介護の会社の説明会を受けた時に
印象的だったのは、「死」に接する場所は限られており
私たちは、それへ使えているというような事を職員が言っていたことだ。
死者は、本当に美しいと彼は言った。
これまでずっと生きてきた人が、止まってしまう事に感動のようなものがあるという。
不謹慎かもしれないとは断っていたが、目は嘘をついていなかった。