新版 図書館の発見 (NHKブックス)

新版 図書館の発見 (NHKブックス)

新たな変革期にある図書館の進むべき道筋を示す。
と帯には書かれている

著者、前川恒雄と石井敦
それぞれ市立の図書館長をつとめ
公共図書館の運営について考えてきた人たちである

本書を通して、図書館が本を読むところ、借りるところであることよりも
それが公共性を主題として構成されていると読める。
むろん目的は本に接することに違いない
だが公共とはどんなことだったか考え直すきっかけとなった。

ボストンでの図書館の成立以来、日本に渡来し
それが根付くまでのおおまかな歴史が書かれており、
理念はあれど、一般化しない
つまりは求められていないとも言えるが
公共性がそこでは成立しがたい状況下であったとも言える。
だが次第に市長選の口当たりのいい票稼ぎ確約を越え
それが本当に市民に必要とされるようになりつつある。

設計サイドである私は
ある建築に担保させる質がそこでの営為の質をも変えることがあると信じている
どんな人でも気持ちのよい「空間」だったから
そこにじっと座っていた経験があるのではないかと思う
建築が公共性に作用し、それが啓蒙となるような
そうした図書館とはどんなものだろうと思索する。

例えば、大きな図書館の巨大なエントランスは
知の深淵に自分がいることを感じ、それが知的好奇心をふつふつと刺激することもある
どちらかといえば、都市とシームレスに気軽に立ち寄れる図書館であるより
私は図書館に来たと感じさせるような図書館のほうがいいのではないかと思う。
図書館を出るとき、都市の見え方が一目盛り向上しているようなそんな図書館

考え出せば楽しくなってしまう。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

本屋で目障りだったので読む
福岡伸一は、分子生物学の専門家である

本書は生物と無生物のあいだというタイトルからも
推測されるように分子の「ふるまい」が
どのようにして生命を描くかを開陳し
生命とは自己複製システムであることを繰り返す

いつも思うが実験をする意図、仮説を証明する手だてがとてもおもしろい。
罠をしかける巧妙さ まさにミステリーのようだ。

実験現場における誤差率が原子がこれほど小さいことを要求している
この大きさと誤差率の関連は超高層化したときに脱落する要素に近い

シュレーディンガーの提唱するもの。
エントロピー(乱雑さ)が最大を向かえることを
制御するために周辺環境より負のエントロピー(秩序)を獲得するという内容だったと思う。
福岡は体内での消化を外部秩序の分解と指摘しシュレーディンガーの考えの誤りを指摘している。

動的平衡、この新陳代謝の猛烈な速度を発見した
シェーンハイマーの実験も中々おもしろい。
なつかしい!アイソトープをトレーサーに使うアイデアは冴えてる。
この激流のような人体が人体であるために上位からそれらが定位する位置を指示しているプログラムがあるのかと思えば、
実は少し違ったようである。
更新される肉体が要求するピースがそこにはまる事をピースの相関座標が要請しているという。

ノックアウトとバックアップ、この二つの言葉はナイスなイメージを与えてくれた。