ベトナムを縦断した。
レニー・クラヴィッツのBack to Vietnumという曲を聞いて
なにを言っているのだろう、このアメリカ人はと思っていたところだった。


私の場合、ベトナムを見ることは、数奇なアジアを見ようとする態度というよりも
ハリウッド映画史の一コマを見ようとすることのように思う。
大雑把にいって、ハリウッド製の映画溶液に浸された私の脳みそには、
ベトナム戦争の影がどこかに滲んでいるのではと考えるようになった。
コッポラの地獄の黙示録なら、暗闇の水辺に設けたステージで真っ白なショーガール
兵士たちを楽しませるべく、踊るシーンがある。
あの不気味なテンションは当時のアメリカにあった心理的ストレスだったのだろうと思う。


冷戦下にあって、朝鮮よろしくベトナムも南北にブッチギラレタ背景を持つ。
戦争では深みにはまって行くアメリカは、
ダイオキシンや精神異常といった社会的トラウマを作り出して行く。
しかし今、文字通りの忘れたい過去に戻りたいと歌うアメリカ人は、どんな精神状態なのだろう。


夕暮れ時、私が川辺で眺めた樹々は、まさにコッポラの映画でみた、そのものだった。