こいつはMaison Louis Carreにおいてあったその模型だが、
えらく痛んでいる。しかし未だに熱気を帯びているかのようだ。
安っぽく、精度も狂い始めている上、汚れている。
良い模型はバカみたいにでかければ良い訳でも、精度が良ければよい訳でもなく、
ましては作り込みをすればいいわけでもない。


エントランスを抜けるとあの波打つ天井の間に出る。
緩やかな曲率を目で追いながら、右手に目を向けると、
数段下ったところに、厳しい静けさを持ったリビングが伸びている。
家具調度品が低く抑えられ、床が迫ってくるように見える。
天井から落ちるペンダントが空気の緊迫感を顕現しているかのようだ。


典型的なこの建築家らしいデザイン言語に満たされた豊穣なインテリアを
大きな開口部から取り込まれるランドスケープの鷹揚さがその豊さを希釈していく。
ディテールの多くはフィンランドで見たものの反復のようだが
片流れ屋根のシャープな佇まいは、快適さや機能性とは異なる言語で作られたのではと思える。
もう少し言えば、設計主体はフィンランドの頃と随分、違ったパーソナリティではないかと思える。