暗い時代の人々 (河出・現代の名著)

暗い時代の人々 (河出・現代の名著)


公共、この言葉が本来もっているべき意味はなんだっただろうか。
「暗い」時代という表現は光の失われた、
言い換えると公共性の失われた時代ということとして読めてきます。


公共って言葉は誰にでも開かれたような場所をイメージさせて起きながら
つねに暗部をどこかに胚珠し、自らで公共性を否定しているようなところがあります。
誰も手が届かない領域として名付けられ、
その瞬間から消滅しようと遠ざかって行くような理想郷のことを公共としているのでしょうか。


パースへ添景を盛り込む際の手慣れた手つきは、そんなものへの絶望とも思えます。
本書ではギリシャにおける古代的公共性があげられている。
私には細かいことはわからなかったが、古代って言葉がもっている風化した大理石のようなものが
公共性を証明しようとしているのなら、救いがあるかもしれないと思う。