岸辺のない海 (河出文庫)

岸辺のない海 (河出文庫)

「書く」ことの手触りや手つきが文字やその周囲から
微々としてではあるけど、私のようなもんにも伝わってくる。
脈々と受け継がれてきた古い工具で丸太の皮を剥ぎ、
切り落とし、水に付け、乾燥させ、くりぬき、穴を穿つ。
そんな言葉のテクスチュアを確かめながら、引き出しにぎっしりとある工具を選び出し、適当と思う処置を施していく。
小さいけれど、硬質でずっしりと重い言葉が並べられているのを見、手にとり、その石ころの重さを確かめるように
本は読まれ、書かれるのだろうと金井の本書を読みながら、思った。どちらかといえば、過激にふれていく著者の仕事でなんでこんな穏やかなことを考えたのか、


あとがきに現在の著者が書いた
当初の著者との距離を調節しているようなことがかかれている。