たまった下着を洗濯すると
一緒に放り込んだ赤い靴下が災いして
白いシャツが全て桜色になった。


ほとんど白の薄らとした桜色。
それらを一度に全部、染め上げてしまった、そのささやかな大胆さに驚いた。


その洗礼を浴びたシャツたちが
今は他の服といっしょに、こちらの生活に溶け込んでいる。
ときおり、私と数名のシャツたちのあいだでは、目配せが交わされている。


シャツたちもきっと、色々な地の記憶を持っているのだろう。
ああ、あれを経験したシャツたちは、こいつらかと一目で分かる。
またどっかへ連れて行ってあげないとなと思い、
今日もそんな微炭酸のシャツを着る。




須賀敦子 著


古本屋で七巻を見つける。
うちの近所では河出の本はあまり置いてない。


どんぐりのたわごと
友愛・沈黙のうちにおこなわれる使徒
ルネ・ヴォアイヨームのものを訳したものだという。


愛徳とか友愛、
一瞬にして身構えてしまう言葉が出てくるが
読むと、愛って素晴らしいなあと思ってしまう。
相手に与えるのです。と言われて、ああ、私も人を愛さねば、などと思ってしまう。


孤独を生きることをおぼえたところから自由がはじまるのかもしれない。
むしろ、巻末のことの言葉が私には印象に残った。