父に一枚の澤野工房から出ているCDをプレゼントした。
今度はこれを聞いてみようというような、そうした好奇心を
父に伝えたかったのだと思う。


まるで知らない世界への好奇心は、ストップさせてはいけない。



須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)

須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)

さくらんぼと運河とブリアンツァ」
「マリア・ボットーニの長い旅」


夜、軽食を済ますとまっさきに、この本の続きを読み始める。

ミラノを頂点として、コモとレッコを結ぶ線を底辺に逆三角形にひろがる地域を
ブリアンツァというのだそうである。
マリア・ボットーニとは須賀が航路はるばるジェノアに着いた時に
迎えてくれたイタリア人の友人である。


彼女の経験によって、偶然引き寄せられていく人々、地域、物、作家。
そうした全てが、優しく、優雅に描かれているのが彼女の文体の特徴だと思う。
起っていることは、今朝わたしがしたような事だし、友人も私の友人とそれほど変わらない。
成功者であったり、平凡な人だったり、
でも、彼女たち(彼らと言ってもいいが)は、各自が固有のスタイルを持って、生きているように描かれている。


スノッブなことを言う男だったり、皮肉を言わずにはいられない女だったり、
いつも恐れを感じているように見える男でもいい。
どういう人でも、ここに出てくる人たちは、その時、著者と共に生きている感触が伝わる。