「図面が描ける」かどうかは大切な事だろう。
私は相当、図面が描けない部類に属していると
事務所の昔の図面を眺めていて感じた。


美しい図面を描くというのは相当な力が必要だろうと思う。
今、私たちが何食わぬ顔でスケッチし、ダイアグラムやパースと呼ばれるようなものを描いた手は
もはや、コンピュータによって義手となったようなもので
そうした手がスケッチをし、建築を指示しようとしているのは何か欠落しているように思える。


私は建築家を観察していた。
建築家は単純なグリッドをフリーハンドで描くときも
それが精神的な意味で厳格な直線になっていた。
建築とは、直線を引く営みなのだと私には感ぜられた。


いや、CGによる美学が存在していることも分かるし
レイアウト術など繊細さは至る所に発露が見られるのだが
やはり、建築はあくまでも現実の現象であり、それが美しくあるためには
直線が必要なのだろうと今になって強く感じる。


私が今言いたいのは、古い図面を再現しようというものではなく
私たちの時代の感性が図面を取り戻さなければならないのではないだろうか。