白い昼

小学校時代の友達の記憶が
なんの前触れもなくよみがえってきた。
そういうことがときどきある。

彼とはずいぶん仲良しだった。

今思えば彼の家族は安いアパート暮らしで
共働きであった。
そんなことはなにも考えていない当時の私は
友達の家という共通の地平でしかそれを見れていなかった。

1LDKという中で彼は妹に優しい兄であった。
そんな優しさを眺めながら私は彼を慕っていた。

彼の家でゲームに熱中していると
おばさんが帰ってきてちょっとしたお菓子
テイクアウトしてきた広島風お好み焼きを食べさせてくれたのを
今でも覚えている。
あれは家に遊びに来ている友達の分ではなかったように思う。

彼はクラスでもリーダーシップがとれるタイプで
運動もよくできた。
彼の誘いで転校してきた私も剣道を始めた。

私が川崎に引っ越すよりも後に
彼は結局九州に引っ越した。
親たちも若かったのである。
引っ越すというのは、なにかそんな思いを感じる。



親同士が仲良かったので
それから何年かしてまた会ったことを覚えている。
そのときのギクシャクした感じが
彼への記憶をなびかせている。