ろくでなしな空

今日は春かしら。
水色の空の下
いくらかの通行人が都市を闊歩している。
それを眺めながらタバコを燻らせる。
いつものことだった。

代々木の大草原を抜け、西新宿の超高層群が見え
表参道のスカイラインがここからは眺められる。
私には何一つ昨日と違わないものだったはずだ。

たばこが短くなり、灰皿へねじ込む
目がなにかを拾う。
ビニール袋だった。
だれかが不要と思って手放した野生のビニール袋だ。

春風に乗って文字通り縦横無尽に
都市を泳ぐその姿に目を奪われた。
変化のないパノラマの中で
半透明のビニール袋と彼が地面に投影する影だけが
優雅に大きな曲線を描いていた。

やがて駐車場の手摺に絡め取られ
風が弱まり彼なりのやり方で画面から消えていった。

今日は春かしら。
水色の空の下
ビニール袋が飛んでいる。