君が代は千代に八千代に (文春文庫)

君が代は千代に八千代に (文春文庫)

ひどい。
まずそう思った
SMに近親相姦、スカトロとアダルトビデオコーナーに並んでいるような
言葉が乱発される
少なくとも挑発の仕方がガキくさい

AV女優の母を持つ少年の話
生まれてきた娘に近親相姦を考えてしまう父
ノーマルじゃないし
活字も一々ゴシックになって強調してくる
それもうけを狙っているようなはずしかたに見えてしまう上
笑えない冗談になっている

だがいくつか読むうちに滑らかさを伴いだすと
そちらのほうにむしろ、うんざりしてしまう

とにかく逆撫でし、ドロップキック(この言葉の持つプロレスらしさが似合う)を期待している
何かとセックスと結びつけるがそこにはエロさがまったくない
ここが何か新しい野蛮さに思える

素数の話がニュートラルにおもしろいが
そこなのか。




この高橋の小説は一端、書くつもりで
読むと違ってくることに気づいた

きれいな文だと思う
描写の節度がいい
あまり克明に描くのは野暮なんじゃないかと思った
漫画的な描写とリアルな描写がシームレスに繋がる

加藤典洋もかいていたが、
娘が死んでしまう箇所は文章がすごく透き通っていた

繊細な感性の人が必死でふざけるとこうなるんだ。きっと
そういう意味であるつらさが払拭できないでもない。


家路 [DVD]

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フィックスで対象を記録する撮り方があるが
ここになぜ、知性が感じられるのだろうか。

最近映画の見方が変わってきたかもしれない。
家族を失う事故が合った日に
新しい革靴を自分のために買う
そんなことをするかもしれないなと思う挙動が良かった
そんな鑑賞者としての見方が再び沸き起こってきた

曲がり階段の映るショットで枠が赤く塗られている窓がある
太陽が意識的に撮られているように思った

漫然としたフレームワーク
ここで決めたかと勉強になる場面がある
ショットショットに間延びを少しずつ与えることで
映画全体にある印象をもたらしている
意識されないディテールが全体の質をあげ
それがまるでマナーのように実行されている