島の夜は、私のような余所者にはなかなかつらい。ニイザトが歓楽街と言われるエリアだが実態はカラオケばかりである。それくらいしか楽しくねーのさとでも言わんばかりだ。平良港から引き上げた漁師たちが心を休める場所としてできたようだが貫禄のあるご婦人とカラオケをして楽しむ程には私はまだ出来上がっちゃいないようだ。やはり通りには間抜けな歌声が漏れている。ナポリの夜もそうだったが海のある街は浪花節で俗っぽさに溺れたくでもなるのだろうか。
仕方なしにBARで泡盛を頂いていると島のバーテンも暇と見えて私に誰かに話したことのあるだろう話をしてくる。バーテンは垢抜けのしない女で器量は今ひとつだが健康そうだ。いわく、島の人間は島を出られない者を、ありゃ、島を一歩も出んかったなどと言う具合に言い続けるようだ。外を知らんでなにが悪いか、と言えば、そりゃお兄さんは島の者の気持わかりっこねーさー。などと言う。閉鎖的な村ならぬ島社会に幽閉された若人たちは一度島を出たはいいが大半は戻ってくるようだ。それを見て、島の呪いから解き放たれぬことを嘆いているかのようだ。呪いとはよく出来たもんで背中にジュージカ背負ってると自分で思い込み身体が動かんようになっていくさよ。