祖父母の家が三重県の桑名という旧宿場町にある。
さびれているけど、落ち着いたいい街で、
ジョサイア・コンドルの設計した旧諸戸邸が現存したりする。
幼い頃からお祭りの時には訪れていた。
歳を重ねるごとに、この程度の街だったかと地方都市を見ていて思える感覚がある。


伊勢神宮の次の式年遷宮に使うお神木がここを通る。
木曽で採った大木を昔は川沿いに流していたが、
今は紅白幕を纏ったトラックで事をすませている。
白袴を来たおっさんが顕れ、パトカーが出て来て、TV中継もされ、なんか賑わっているのだけど、
初期の北野映画を見ているような乾いた歓声を聞いたのを覚えている。


この人たちは、私を含めて、熱心に神木の様子を見ている。
彼らは地方都市近郊で購入しただろう服を身につけている。
お神木にも触ったり、その檜でつくられた桝で振る舞われる酒を呑んだりした。
式典が終われば、家に帰って、テレビのチャンネルをまわしている。


風呂に入る前には、靴下を脱ぎ、寝る前にには、うだつの上がらない顔を見ながら歯を磨く。
新幹線に乗る度に窓から見える地方の景色は、いつもうら寂しい。
ここで生きてる人がいるのかという事実に少なからず恐怖のようなものをいつも感じる。